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サイクルオプス製品レビュー: DC Rainmaker on パワーキャル Vol. 2


アマチュアトライアスリートで相当なガジェット通のアメリカ人ブロガー、DC Rainmakerさんによる、パワーキャルの徹底検証ブログ記事です。以下はその翻訳です。原文は長文のため、全3部に分けてご紹介いたします。第2部はロングライドやインターバルトレーニングでの平均値算出パフォーマンスのほか、TSSやNP、IFといったデータにも迫ります。


原文掲載日: 2012年11月14日
文: DC Rainmaker




■長時間でのパワー測定精度

短いスプリントでのパワーキャルの測定性能の検証の次は、長時間のワークアウトでのデータ精度を調べてみた。結論から言うと、こちらの計測結果は驚くほど良いものが出た。

10,000円という販売価格設定が示唆するように、パワーキャルの主要ターゲットユーザーは、ラップ毎の詳細なデータ比較やインターバルでの数ワットの違いにフォーカスするようなコアサイクリストではなく、従来の1/10の出費でトレーニング全体のパワー平均値がザックリと分かれば十分と考えるようなパワートレーニング入門者だ。この検証結果はそれを表している。

実際のところ、様々なバイク情報交換サイトで投稿されている多くのパワーキャルデータと今回のデータとは傾向が一致している。たしかに時折異常値が飛び出すこともあるが、パワーキャルユーザーのその平均値算出の性能の高さに対しての満足度はおしなべて高いようである。



例として上に僕の最近の4回のライドデータを掲載しておこう。もちろん、平均値だけでトレーニングのすべてを伺い知ることはできない。最大値やそこに至るまでの事象など、パワートレーニングの最大のメリットである「早く、効率的に強くなる」ための貴重な情報は、平均値からは得られないものだ。そのため、実測式パワーメーターを所有しているコアなユーザーのなかには、トータルの平均を見ても無意味だと言う人も多い。第1部で見てきたように、ライド平均値へ辿り着くには何通りかあり、肝心なのはその値を導き出したトレーニング中の運動内容である。平均値以外の仔細なデータが重要と言うのはそのためだ。

しかし、パワーキャルの購入を検討している人の多くは今現在、スピードメーターくらいしか使っていないような人だろう。言うまでもなく、スピードは風やコースプロフィール、雪や雨といった環境的要素に大きく左右される指標だ。トレイルや街中をスルスルとすり抜ける技術の有無だけでも大きく数値が変わってくる不安定なデータだ。

その点で、パワーキャルもスピードメーターも大きくは違わない。しかし、パワーキャルが示してくれる出力というデータは、トレーニングの目安とするのに十分安定性のある指標だ。単純なスピードメーターとはそこが決定的に異なる。パワーキャルのデータをグラフで確認し、最新ライドとシーズン通算の平均ワット同士を比べることで、誰でも自身のフィットネスレベルの向上具合を確認することができる。このレビューで明らかにしていく、パワーキャルというツールの限界を理解し賢く使うなら、パワーキャルの価値は確実にあると言える。



■TSS/NP/IF(トレーニング・ストレス・スコア/標準化パワー/強度係数)

これらはトレーニングが体に与える負荷を数値化するうえで、最も普遍的に使われているメトリクスだ。トレーニング全体の負荷を示すのがTSSとIF、ライド単位での負荷はNPだ。※これらについては『パワー・トレーニング・バイブル』で詳しく説明されています。

これらいずれのメトリクスも、パワーキャルとTSS/NP/IF表示機能のあるサイクルコンピューターで見ることができる。サイクルオプスのジュールシリーズやガーミン製の一部のコンピューターやウォッチなどがそうだ。

しかし厳密に言えば、パワーキャルのデータの変動幅の大きさを原因として、これらの数値にも多少なりともムラが出るだろう。たとえば、時折発生する異常に高い数値がこれらのデータの精度に影響を与えることは想像に難くない。高い数値=ユーザーがスプリントのような瞬間的な最高強度の運動をした、とパワーキャルが判断するからだ。しかし現実には、高出力スプリントと長めの回復走を繰り返すような走行のほうが、低強度で長時間の走行よりもトレーニング強度が高くなるのが普通だ。また逆に、パワーキャルが実際よりもはるかに低い数値を何度も出し、実際の運動強度よりもイージーに走っていると読めるデータが出ることも。このようにパワーキャルのバーチャル数値の場合、数値の大きな変動が原因で、現実とはかけ離れた数値の指標となる。

それではパワーキャルが思いのほか正確な数値を示した例を下にあげよう。ライド全体の平均ワットがPower2Maxのそれと非常に近いのである。各メトリクスの違いは以下の通りだ。



データ記録に使用した2台のサイクルコンピューター間で、TSS/NP/IF計算プログラムの相違があるといけないので、上記のデータはTrainingPeaksの同じアカウント内で(つまり全く同じ条件で)計算されたものである。データ検証を行う際、僕は必ずゼロ数値も含めた毎秒のデータを記録するが、もちろん今回のデータ記録でもそれに従った。



もともとのサイクルコンピューターのデータ記録の仕様の違いが結果数値にもわずかな差として現れたが、TSS、NP、IFへの影響はない。



■ローラー台での屋内ライド

僕は普段のトレーニングの80%はインドアトレーナー(ローラー台)で行っている。屋外よりも質の高いワークアウトができる(トレーナーでは足を止めるヒマがないのでキツイ)のと、都市部在住だと屋内のほうがトレーニングしやすいからだ(同じ住環境の人にはトレーナーはゼヒともオススメしたい機材だ)。

僕の行うすべてのパワーメーター精度テスト同様、キャリブレーション機能のあるパワーメーターはウォームアップが終了する10分地点でいったんキャリブレーションをかけている。表の左がワークアウトの種類を示している。たとえば、『ウォームアップ・ワット』は10分セクションで、『キャリブレート・ワット』はデータ記録は中断せずにキャリブレーションを行う2分間、という具合だ。



 トレーナーワークアウト #1

ワークアウト全体の平均ワット(2行目の"Avg Watts")に示されたとおり、パワーキャルと実測式パワーメーター2種は、お互いに十分に近い平均出力値を出した。




 トレーナーワークアウト #2

パワーキャル+インドアトレーナー検証第2ラウンドはインターバルトレーニングの類のワークアウトを行った。下の表はそのワークアウトから無作為にいくつかのインターバルを抜き出したもの。ここでもライド全体の数値(2行目の"Avg Watts")は近いものとなった。各インターバルは60秒ずつで、毎回の休憩も同じく60秒。インターバルの合間の休憩中の数値(下から5行目の"Rest watts")だが、パワーキャルでは高めに出ているのが分かる。これは休憩中も僕の心拍が高めのままだったからだろう。休憩中もペダルを完全に止めるのではなく、足は軽く回し続けているので、実測式パワーメーターでも出力は記録されている。しかし、実測式パワーメーターが軽めのペダリングを忠実に記録しているため、パワーキャルに比べて数値は低めとなっている。



このレビューのために、毎週毎週トレーナー上でパワーキャルによるデータを収集したが、総じてその正確さには舌を巻いた。

【第3部へ続く】
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DC Rainmaker

シアトル出身のアマチュアトライアスリート。テクノロジー関連の職業に従事するかたわら、趣味のバイクやランについてブログで書いたり、新製品のインプレッション記事を投稿したりしている。なかでもインプレでの分析の徹底ぶりは突出しており、またメーカーとアフィリエイトしない方針のため、製品の長所も短所も網羅した中立的なレビューが多くの読者から支持されている。

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