アメリカの人気サイクリングポータルサイト、Pez Cycling Newsがサイクルオプスの最新パワータップモデル、G3のインプレッションを掲載しました。以下はその翻訳です。
原文掲載日: 2012年11月26日
文: Dr. Stephen Cheung, Ph.D.
© PEZ Cycling News |
ここ数年、選択肢が大幅に増えた自転車用パワーメーターだが、この注目分野を代表するブランドとして真っ先に名が挙がるのがサイクルオプスだ。独自のハブベースのパワーメーター、パワータップは、ワイヤレス化やANT+対応化など常に時々の最新技術が投入され、もう10年以上も市場からの絶大な支持を受けている。今回我々はその最新モデル、G3の性能を試すことができたので、ここにその始終を紹介したい。リムはエンヴィ45。サイクルオプスの公式完組カーボンホイールだ。 |
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数あるパワーメーターのなかで、パワータップってどうなの? |
■ レビュー環境 |
今回使用するパワータップG3は私にとって3台目のパワータップとなる。私の初めてのパワータップは2006年の有線式のパワータッププロSLで、今はフェンダー付きのトレーニング兼通勤バイクに履かせているが、一切の不具合なく作動してくれている。といっても、かつては長い間Zipp 303という私の秘蔵レースホイールに組み込んでいた1台なのでそんなに酷使していたわけではないが、とにかくこのハブで一切のトラブルに見舞われたことがない。電池交換は至って簡単だし、たいした手入れもしてないけれどベアリングはまだスムーズに回ってくれている。 |
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ただ、有線式パワータップを未だに使っている人は少数派だろうから、今回のレビューでパワータップG3と比較を行うなら、私の2台目のパワータップ、PRO SLワイヤレスモデルが適当か。こちらは2010年の秋以来、世界中をともに飛び回ってきた相棒だ。リムはDT Swissの465で、この2年はどのバイクに乗るにしてもホイールはほぼ常にこいつだった。トレーニングにシクロクロスレースにと2010年はフルシーズン使いまくったけれども、こちらも不具合は一切なかった。
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何と言ってもこれがハブシステムの、クランク式パワーメーターにはないメリットだろう。シーンに応じて3台のロードバイクと1台のシクロ用バイクを次から次へと乗り換えても、リアホイールを履きかえるだけでいつでもパワー計測ができるシンプルさ。おかげで私の場合、10ライド中9の割合で詳細なパワーデータが得られているのだから、そのメリットはとても大きい。繰り返すが、このワイヤレスパワータップはこの2年間、完璧に動いてくれている。オランダでの休暇中にはリッチーのトラベルバッグで10回ほど運搬したり、大雨のなかを走ったことも何度かあったのに。 |
パワータップG3でも、トルク計測の要である歪みゲージの設置数と精度は従来のモデルと変わっていない。4組の歪みゲージがハブシェル内に取り付けられ、信号発信が毎秒行われているのもG3とG2モデルで共通だ。
ではG3パワータップでは一体何が変わったのだろうか。すでにパワータップSL+を使っている人なら「わざわざG3に買い替える価値はあるの?」と思うだろうし、初めてのパワータップ購入を検討している人なら「中古のSL+と新品のG3ではどっちにしたほうがいいの?」と悩むところだろう。
個人の最新機材やハイエンド機材へのこだわり度合いや中古相場にもよるので、そういった疑問・質問への答えはひとつではないが、まず言えることは、G3が『新製品』と呼ばれるのは、単なるグラフィックやカラーの更新のためでは決してないということだ。それではパワータップがG3システムになって大きく変わった点を挙げよう。
まず、ハブは完全にイチから設計され直しており、その証のひとつが通信アンテナやトランスミッター、プロセッサーといったエレクトロニクス群の、ハブシェルのノンドライブ側に外付けされる『パワーキャップ』と呼ばれるユニット内への設置だ。G2ハブの場合、ノンドライブ側には電池を覆うプラスチック製のカバーがあるだけで、肝心の電子部やトランスミッターはハブシェル内蔵となっていた。この構造ではハブシェルそのものを大きくせざるを得ないし、何より電子系のトラブルに見舞われたら、ホイールごとメーカーに送り返し、ハブシェルの中身(=トルクチューブ)を入れ替えするという大手術を行うしかなかったのである。これがG3では、前述したパワーキャップの交換という単純作業に取って変わった。 |
© PEZ Cycling News パワータップG3は電子ユニットが外付けとなり |
G3になっても歪みゲージとメイン電子基盤はハブシェル内蔵のままだが、もとよりこれらのコンポーネントが不具合を引き起こすことはほとんどない。よって、G3ハブの電子系リペアと言えば、ほとんどの場合パワーキャップの交換となる。販売元とのやり取りはこの小さなパーツだけで済むので、ホイールごと送るのに比べれば送料ははるかに安くあがるし、輸送中の事故でホイールにダメージが生じるような心配もない。また、パワーキャップにはMicro-USBポートが装備されていて、ファームウェアの更新で常に新しい機能の追加が可能なのもG2パワータップにはなかった特徴だ。
次に、パワータップG3ではSL+から87gものウエイトダウンを果たし、重量325g(フリーボディー装着時)となっていて、一般的に上級とされるノーマルリアハブの重量と遜色ないレベルとなっている。これで「パワータップは重いのが難点」といった従来の不満はほぼ解消されるといっていいだろう。私の場合、そもそもバイク上でも地面に近い場所に位置し、回転部分の中心であるハブの重量など問題に思ったことはないのだが。
© PEZ Cycling News パワータップG3ハブではフランジ幅が広げられ
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次にホイール剛性。G3のフランジ幅はセンターからノンドライブ側フランジが38.0mmと、G2の31.7mmから広くなっている。これで理論的にはホイールの剛性と耐久性が向上することになる。ただし、私の2台目のパワータップホイールはこれまでの酷使で満身創痍の状態で、G3の剛性アップを実感するための比較用ホイールとしては適当ではないかもしれない。とは言え、このパワータップG3とエンヴィカーボンリムの組み合わせでは、横剛性はあり得ないほど高いということは確実に言えるだろう。実際、ブレーキパッドを限界までリムに近づけたセッティングで激しくスプリントをしても、パッドがリムに触れることがないほどだ。 |
G2とG3のどちらのパワータップも、ケイデンスデータのソースとして別途独立したセンサーを使用するか、ペダルに加わる出力の変動周期から算出される、パワータップのバーチャルケイデンス情報を使用するか、2つの選択肢がある。このバーチャルケイデンスだが、私が使用した限りでは、G3ではより正確な数値が弾き出されているように思える。特にG2ほど突飛なケイデンス数値を出すことが少ないようだ。一定ペースで走っていても、G2だと時折過大もしくは過小なケイデンス値を表示することがままあるのだが、G3ではその現象が遥かに少ない。これはパワータップ開発陣によるケイデンス算出アルゴリズム改善の賜物かもしれない。こういった電子箇所の改善はメーカーにて随時行われており、G3のみ可能なファームウェア更新機能の有効性を示す例といえよう。
パワータップだけが採用しているリアハブでのトルク計測システム。その大きな利点として、ホイールの交換だけで複数のバイクでパワー計測が可能なことが挙げられる。私は3台のバイクを常時使用しているが、この簡便性はクランクベースのパワーメーターとは比較にならない大きなアドバンテージだ。さらに、それぞれのバイクに搭載されているコンポはSRAM、シマノ、カンパとバラバラだが、フリーボディーをシマノ兼SRAM用とカンパ用で入れ替えるだけで各コンポに対応できるというのが非常にありがたい。この便利さはG2でもG3でも同様だ。 |
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フリーボディーの入れ替えはシンプル。フリーを引き抜き |
パワー計測という機能の精度で言えば、G2もG3も同様に最高水準のパワーメーターである。もしG2ハブを安価で手に入れることができたのなら、(トレーニングやシクロクロス用途では特に)何も心配はいらない。
これまでのどの世代のパワータップも信頼性は最高だと思う。とは言え、何らかの不具合が生じてしまったパワータップハブを目撃したことがあるのもまた事実だ。そのことを思うと、やはりリペアに関するG3の利便性は捨てがたい点だ。
それ以上に、大幅な重量減や向上している(はずの)ホイール剛性もG3の魅力であり、リーズナブルな価格設定も相まって、パワーメーターの初めての購入や買い替えを予定している人にとっては検討の価値おおいにアリの製品だ。
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