アマチュアトライアスリートで相当なガジェット通のアメリカ人ブロガー、DC Rainmakerさんによる、パワーキャルの徹底検証ブログ記事です。以下はその翻訳です。原文は長文のため、全3部に分けてご紹介いたします。第1部は製品の基本仕様や短時間トレーニングでの使い勝手の検証がメインです。
原文掲載日: 2012年11月14日 |
1年ちょっと前にサイクルオプスが発表した新製品で、同ブランド初となるハブシステム以外でのパワーメーター、パワーキャル。サイクルオプスはパワーメーターや専用サイクルコンピューター開発・製造の歴史が長く、何年もこの分野の牽引役を 務めてきているのは周知のとおりだが、パワーキャル発表当時、心拍データのみをベースにしているということで、このパワーメーターのデータ信頼性についてはさすがに懐疑的な声が多く、さらに25,000円というパワーメーターとしては破格の予価がそれに拍車をかけた(実際には2012年7月に税込10,000円で国内販売開始、2013年5月1日現在は12,000円)。今回、DC Rainmakerが渦中のパワーキャルを徹底的に使用・分析し、巷の噂と事実の切り分け、そしてFUD(消費者の不安・疑念・不信)の解消に挑んでみた。 |
どこから見ても、普遍的なANT+心拍ストラップと変わらない。 |
このレビューでは、考えうるパワーキャルの用途(使用シチュエーション、エッジケースなど)ごとのデータ分析と、製品のメカ的側面の検証を行うが、進め方としては、まず単純な部分の説明を一通り行い、後半でそれぞれの部分をより深く掘り下げて検証していくことにしよう。 |
■ヘッドユニットとの設定、インストール、ペアリング
パワーキャルは使用前の設定がとってもシンプルで、この段階では普通の心拍ストラップと何ら変わらない。 |
さてペアリング。パワーキャルの場合、ペアリングは2度行う。心拍センサーとしてのペアリング、そしてパワーセンサーとしてのペアリングだ。通信レンジ内にあるデバイスを一括で読み込む、便利な機能があるのはサイクルオプス純正のジュールコンピューターだけなので、他社のサイコンユーザーはペアリングを2回頑張ろう。 |
『パワーメーターが検知されました』というメッセージ表示 |
パワーセンサーが読み込まれたら、同じ作業を心拍センサー分も行う。心拍ストラップのペアリングコマンドは、たいていユーザー設定かバイクセンサー設定メニューにあるはず。 |
■サイコンのディスプレイ上ではまさに通常のパワーメーターそのものパワーキャルについて分かっておくべき大事な点は、対サイコンとの動作、そしてサイコン上での表示を見る限り、通常のANT+パワーメーターとなんら変わらないということ。先ほどのサイコンとのペアリングも、通常のパワーメーターとしてペアリングを行い、そして成功した。パワーキャルはパワータップ同様、パワー数値表示機能があるANT+対応サイコンであれば、ほぼ間違いなくリアルタイム・平均・最大のパワーを見ることができる。 |
加えて一部のサイコンでは以下のデータ表示も可能で、この部分にパワーキャルとパワータップの違いは全くない。 ■パワーの変動
サイクルコンピューターに表示されるパワーの数値で、パワーキャルを使用している場合とほかの実測式パワーメーターの場合とで大きく違いが現れるのが、現在パワーの変動のしかた、つまり表示されるパワーの数値が安定しているか否かということだ。 |
3秒スムーシング時のパワータップとパワーキャルの数値の違い、さらに30秒スムーシング時のそれ、そしてペーサーとして利用するにはどちらのスムーシング時間のほうがいいのかが、このビデオで分かる思う。 |
■パワー分析記録されたパワーデータの分析に入る前に、パワーキャルのパワーグラフがどのような見え方をし、実測式パワーメーターのそれとどう異なるのかを簡単に見ていきたい。 |
パワーキャルのグラフは11秒スムーシングをかけてやると、実測式パワーメーターのそれとさほど変わらないように見える。 |
しかし、スムーシングをオフにすると、実際には数値の暴れ方が激しいことが分かる。 |
同一ライドをパワーキャルで記録したデータとパワータップで記録したデータを比較してみよう。パワーのデータというのは一般的に数値の上降が激しいものだが、パワーキャルのグラフは特にその傾向が顕著だ。 |
パワータップの場合、より頻繁に数値が底をついている。 |
パワーキャルのグラフでは数値がゼロになる(グラフの底をつく)頻度がパワータップに比べて少ないが、これはペダルを踏むのをやめるとパワータップが瞬時にそれを感知し、結果、数値ゼロがデータに多く記録されるためだ。しかしパワーキャルの場合、心拍をパワー計算のベースにしているため、足が止まるといった実際のライダーの動作変化への反応に時間がかかることからこのようなグラフの違いが出るのだ。 |
■短時間(スプリントやインターバルトレーニング)でのパワー測定精度パワーキャルについての質問で非常に多いのが、短いインターバルでのパワー測定や実際の足の動きに対しての反応速度はどうかという点だ。繰り返すが、パワーキャルに備わったすべての機能のベースは心拍データだ。そして言うまでもなく、出力の変化に対する反応が心拍に現れるまでには少しのタイムラグが生じる。 |
これを見て分かるとおり、17分間のウォームアップから5分、2分、1分ときて、30秒までのインターバル走では、パワーキャルは比較的、実測式パワーメーターが計測した数値とかなり近い数値が並んでいる。これよりさらに下に進み、40秒、15秒、20秒のインターバル(黄色のハイライト部分)では数値の差が大きくなっている。どうやら30〜40秒あたりの時間がスプリントでのパワーキャルの出力計測能力の限界と思われる。 |